美瑛町で「持続可能な観光目的地実現条例」(※1)が制定されました。同条例は、理念条例であり、豊かな地域資源をより良い形で次世代へと継承するため、町、町民、観光事業者及び観光客等の訪問者が相互に協力し、持続可能な観光目的地の実現に向けた取組を推進することを目的としています。

これまでの観光振興関係の条例では、観光事業の推進のために、基本理念や自治体や住民等の責務・役割、そして基本施策について規定されることが一般的でした。しかし、美瑛町持続可能な観光目的地実現条例は、観光振興を目的としたものではなく、観光による訪問者の責務、迷惑行為の禁止や立入制限区域の指定など観光地としての持続可能性を確保するための規定が設けられています。

コロナウイルスの感染拡大前には、国内外からの観光客増加によるオーバーツーリズム(※2)や観光公害が問題として挙げられ、観光庁もこれらの課題に取り組んできました(※3)。コロナウイルスによる自粛ムードも徐々に和らぎ、観光客が増えていくことが予想されるいま、観光客に対しても一定の役割を求め、観光資源や住民の生活環境を守る先進的な事例として注目に値するのではないでしょうか。

※1:パブリックコメント向けの素案及び12月議会に上程された議案が公開されています  が、3月議会で可決された議案は3月3日時点では確認できておりません。

※2:「特定の観光地において、訪問客の著しい増加等が、市民生活や自然環境、景観等に対する負の影響を受忍できない程度にもたらしたり、旅行者にとっても満足度を大幅に低下させたりするような観光の状況」(観光庁, 平成30年版「観光白書」, p. 111)を指します。

※3:取組をとりまとめたものとして、観光庁持続可能な観光推進本部による「持続可能な観光先進国に向けて」(2019年6月10日)があります。

【条文】
※12月議会に上程された議案を記載しております。3月議会で可決された議案は3月3日時点では確認できないため、あくまで参考としてご覧ください。

美瑛町持続可能な観光目的地実現条例
(前文)
美瑛町は、雄大な十勝岳連峰の山々を望み、四季折々の彩り豊かな自然景観と良質な温泉、開拓によって切り拓かれた美しい農業景観とおいしい食材等の恵まれた資源を活用し、観光目的地として多くの人々に親しまれてきました。
これら資源は、言うまでもなく美瑛町に住む私たちのかけがえのない財産です。そして、まちに訪れる方々にとっても大切な財産であってほしいと願っています。
この財産を守り、育てていくためには、農業と観光の連携や魅力ある観光目的地としての磨き上げに取り組む必要があります。 私たちは、このような認識の下、町に訪れる方々とともに、町、町民、観光事業者が一体となって相互に協力し、より美しいまちの姿を次世代に引き継ぐためにこの条例を制定します。
「みんなの美瑛町」であり続けるために。
(目的)
第1条 この条例は、町、町民、観光事業者及び訪問者が相互に協力し、持続可能な観光目的地の実現に向けた取組を推進することを目的とします。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるとおりとします。
(1)町民 町内に居住する者をいいます。
(2)観光事業者 町内で観光に関わる事業活動を行う個人、法人及び団体をいいます。
(3)訪問者 観光目的等で町内に一時的に滞在する者をいいます。
(基本理念)
第3条 町は、町、町民、観光事業者及び訪問者の適切な役割分担と相互の協力のもと、次の各号に掲げる事項を推進することにより、持続可能な観光目的地の実現を目指します。
(1)豊かな地域資源と景観の保全及び活用を通じた癒し、楽しみ、喜びを感じることができる魅力ある観光まちづくり
(2)町民の生活と経済活動等との調和がとれた観光まちづくり
(3)人と人のつながりや交流、様々な体験を通じた地域社会とふれあいのある観光まちづくり
(責務と役割)
第4条 前条の基本理念を達成するため、町、町民、観光事業者及び訪問者は、それぞれ次 に掲げる責務と役割を担うものとします。
(1) 町は、基本理念の達成に必要な施策を総合的に講ずるとともに、持続可能な観光目 的地の実現に向けた意識の啓発と観光の質を高めるための人材育成に努めます。
(2)町民は、観光の意義に対する理解及び関心を深め、魅力ある観光目的地の実現に積極的な役割を果たすよう努めます。
(3)観光事業者は、事業活動を通じて町民、訪問者に快適なサービス及び環境を提供するとともに、従業員に対する意識の啓発と魅力ある観光目的地の実現に積極的な役割を果たすよう努めます。
(4)訪問者は、町が実施する観光目的地としての地域資源の保全活動等に協力するよう努めます。
(美瑛町観光マスタープランの策定)
第5条 町長は、持続可能な観光目的地の実現に向けた施策の総合的かつ計画的な推進を図 るため、美瑛町観光マスタープラン(以下「マスタープラン」という。)を定めます。
2 マスタープランは、持続可能な観光目的地の実現に向けた町の方針、目標並びに町民、観光事業者及び訪問者の行動の指針について定めます。
3 町長は、マスタープランの策定に当たって、あらかじめ町民等の意見が反映されるよう必要な措置を講ずるものとします。
4 町長は、マスタープランを策定したときは、速やかにこれを公表します。
5 前2項の規定は、マスタープランの変更について準用します。
(迷惑な行為等の禁止)
第6条 何人も、良好な景観に損害を及ぼすおそれのある行為及び生活環境の保全に支障を きたすおそれのある行為をし、又はさせてはなりません。
2 何人も、他人の私有地に無断で立入りをしてはなりません。
(立入制限区域の指定)
第7条 町長は、前条の行為が認められるときは、期間を定めて立入制限区域を指定するこ とができます。
2 町長は、立入制限区域を指定しようとするときは、あらかじめ土地所有者、管理者その他の許可の権限を有する者等の意見を聴くものとします。
3 町長は、必要があると認めたときは、指定した立入制限区域を変更し、又は立入制限区域の指定を解除することができます。
(標識の設置)
第8条 町長は、前条の指定をしたときは、当該区域内にその旨を表示した標識を設置する ことができます。
(推進体制の整備)
第9条 町長は、国、他の地方公共団体、観光協会、DMO、観光事業者及びその他の関係 団体等と連携、協働して、持続可能な観光目的地の実現に向けた施策の総合的かつ計画的 な推進を図るための体制を整備するものとします。
(施策の検証)
第10条 町長は、持続可能な観光目的地の実現に向けた施策の実施状況を検証するととも に、その検証結果を施策に適切に反映させるよう努めます。
(財政上の措置)
第11条 町長は、持続可能な観光目的地の実現に向けた施策を推進するため、必要な財政上 の措置を講ずるよう努めます。
(施行規定)
第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定めます。
附 則
この条例は、令和5年4月1日から施行します。

【参考】
https://town.biei.hokkaido.jp/files/00004600/00004617/20231216_kaigiroku.pdf
https://town.biei.hokkaido.jp/files/00004600/00004617/20222215_gian.pdf